2026年1月、冷え込む冬の空気の中で、資生堂はひとつの節目を迎えました。
日本国内で実施された希望退職には、当初想定していた200人を大きく上回る257人が応募し、3月末をもって会社を去ることが確定しました。2024年に日本事業で約1,500人の早期退職が実施され、その後、米州子会社や本体での希望退職が加わって、国内外を合わせた人員削減は累計で約2,000人。長年「ピープルファースト」を掲げ、人を最大の資産としてきた資生堂にとって、これは単なるコスト削減ではなく、企業文化そのものにメスを入れる痛恨の決断でした。
しかし、この激痛の先にこそ、資生堂が再び立ち上がるための「現実的な再生シナリオ」が見え始めています。
痛みの先にある「筋肉質な組織」への転換
今回の構造改革(アクションプラン2025–2026)により、資生堂は2026年までに約250億円規模のコスト削減効果を見込んでいます。これまで同社は、事業売却や外部委託によって資産の軽量化を進める一方、本体組織の肥大化と意思決定の遅さという課題を抱えてきました。
人員削減は、その歪みを是正し、現場と経営の距離を縮めるための「再設計」と位置づけることができます。藤原憲太郎社長は、2026年の米州事業黒字化を明言しており、コスト構造と組織のスリム化を前提とした反転攻勢の準備は、着実に進められています。
揺るぎない「中核ブランド」:クレ・ド・ポー ボーテ、SHISEIDO、NARS
業績の変動が続く中でも、資生堂のブランドポートフォリオには明確な「核」が存在します。クレ・ド・ポー ボーテ、SHISEIDO、NARSの3ブランドです。
クレ・ド・ポー ボーテ(CPB)は、資生堂の最上位に位置するラグジュアリーブランドとして、グローバルで高い利益率を維持しています。景気変動の影響を受けにくい富裕層を中心に支持を集め、資生堂の収益構造を下支えする存在です。
SHISEIDOは、「日本発のサイエンス」と「生命感あふれる美」という思想を軸に、アジアを中心としたグローバル市場で安定したブランド価値を築いてきました。企業ブランドとしての信頼性とスキンケア領域の厚みは、グループ全体の基盤となっています。
そしてNARSは、メイクアップ領域における中核ブランドとして明確に位置づけられています。アーティスティックで大胆な世界観を武器に、欧米およびアジア市場で高い認知と支持を獲得しており、スキンケア偏重になりがちな資生堂の事業構造において、成長ドライバーとして重要な役割を担っています。
CPBやSHISEIDOとはブランド思想こそ異なるものの、売上規模とグローバル展開力の両面で、同列の「コアブランド」として戦略的に扱われている点は見逃せません。
2026年、資生堂は「再生」への転換点を迎えられるか
資生堂の再生は、単なるコスト削減やブランド整理の物語ではありません。それは、長年かけて積み上げてきたサイエンス、感性、そして人の力を、次の10年の「美の価値」へどう再編集するかという「選び直し」のプロセスです。構造改革によって軽くなった組織、明確化されたブランドの役割、そして世界と戦える研究・デジタル基盤。これらをどう結び直し、新しい成長モデルとして提示できるか。その成否こそが、資生堂を再び世界の第一線へ押し戻すかどうかを決めることになるでしょう。



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