「角質層まで」の壁をどう越える?――メーカーが競う「浸透技術」と広告表現の境界線

Beauty Policy

化粧品の広告やパッケージで、必ずと言っていいほど目にする言葉があります。
それが「※角質層まで」という注釈です。

「どうして、わざわざ書くの?」
「その先には届かないという意味?」

そんなふうに感じたことがある方も多いかもしれません。
実はこの一文には、日本の化粧品を取り巻く制度と技術のせめぎ合いが凝縮されています。

今回は、スキンケアの裏側にある「浸透」の考え方と、
メーカーがどこまでを“語れるのか”という広告表現の境界線を、ひもといていきます。

なぜ「角質層まで」という表現が使われるのか

私たちの肌の一番外側にある角質層は、厚さわずか約0.02mm。
ラップ1枚ほどの薄さですが、外部刺激から体を守るための非常に優秀なバリアです。

この角質層は、水分と脂質がミルフィーユ状に重なった「ラメラ構造」をしており、
異物が簡単に入り込めないよう、精巧にできています。

そのため、一般的な化粧品が「どこまで作用するか」を表現できる上限は「角質層まで」
(角質層=簡単に言うと肌の一番上の層)と定められています。
これは「それ以上は届かない」という意味ではなく、
「それ以上については、制度上、語ってはいけない」という線引きです。

だからこそ、化粧品開発では
「成分をたくさん入れること」よりも
「角質層になじませ、効率よく働かせること」
が重要になってきました。

表現の幅が変わる「医薬部外品」という制度

この表現上の制約に変化をもたらしたのが、医薬部外品という制度です。

医薬部外品は、
・有効成分
・効能
・用法
について、国の承認を受けた製品カテゴリー。

承認された効能の範囲内であれば、
一般化粧品よりも踏み込んだ表現が可能になります。

広告表現の好例:ONE BY KOSÉ ザ リンクレス W

今回、好例として
ONE BY KOSÉのザ リンクレス W
を挙げたいと思います。

ONE BY KOSÉ ザ リンクレス Wは、「シワ改善」の効能が認められた医薬部外品です。
その広告では、
「日本で唯一、表皮、真皮だけではなく、基底膜まで効く」
という、非常に印象的なコピーが使われています。

この言葉を目にして、
「成分が基底膜までそのまま届くという意味?」
と感じた方もいるかもしれません。
そう、基底膜というのは角質層よりさらに肌の深部にあたります。

ここで注意したいのは、
「成分が物理的に真皮までそのまま届く」と承認されているわけではないという点です。

医薬部外品として国が認めているのは、
有効成分であるライスパワー® No.11+
「肌の水分保持能を改善し、シワの改善につながる効能を持つ」ということ。

その効能を、肌の構造に即して説明すると、
「シワに関わる表皮や真皮といった領域に働きかける」という表現になります。

つまり、これらの広告表現は
浸透の深さを断定するものではなく、効果の働きかけをイメージとして伝えるための言い換え
医薬部外品という制度の中で、許された範囲を丁寧に使っている例だと言えるでしょう。

記事っぽく小難しく書きましたが……
成分がそのまま真皮の方まで届くのではなく、「シワって真皮・基底層の話だから、シワが改善する有効成分が入って
いてシワに効くんだから、真皮や基底層まで効くって言って良いよね」と、すんごーく簡単に言うとこういう感じになります。

有効成分「ライスパワー® No.11+」とは何か

ONE BY KOSÉ ザ リンクレス Wを語るうえで欠かせないのが、
有効成分のライスパワー® No.11+です。

この成分の特徴は、
一時的にうるおいを与えるのではなく、
肌が水分を保つ力そのものを改善すると認められている点にあります。

その結果として、
乾燥によって目立ちやすくなったシワが目立ちにくくなる。
この「肌状態の変化」が、「シワ改善」という効能につながっています。

ここでも重要なのは、
「どこまで届くか」よりも
「どんな変化が確認されているか」。

広告表現は、この“結果”をどう分かりやすく伝えるか、という工夫の一つなのです。

「技術買い」という視点で見るスキンケア

デパコスとプチプラの価格差に迷うコスメ愛好家は少なくありません。
その差の一部は、成分そのものよりも、
浸透設計や製剤技術、そして承認を得るまでの研究プロセスにあります。
・一般化粧品:角質層を中心に、保湿やキメを整える
・高機能な医薬部外品:肌の構造や機能変化まで見据えた設計
すべてがそうとは言い切れませんが(一般化粧品の中にも「一般化粧品にとどまっておくのはもったいない!」「大人の事情があるな」というものもあります)、この考えが一つの軸になるでしょう。

「なんとなく高いから良さそう」ではなく、
「どこまで考えて作られているか」で選ぶ。
そんな視点を持つと、価格の見え方も少し変わってきます。

「角質層まで」のその先を読む

「角質層まで」という注釈は、
化粧品の限界を示す言葉ではありません。

むしろその裏には、
制度の中でどう表現するか、
どうやって確かな変化を届けるか、
というメーカーの試行錯誤があります。

注釈の意味を知ったうえで読み解くと、
スキンケア選びはずっと納得感のあるものになります。

次にコスメを手に取るときは、
「どこまで届くか」だけでなく、
「何が、どう変わるとされているのか」に目を向けてみてください。
それが、大人の肌と向き合うための、いちばん穏やかで確かな近道です。

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