ホルムズ海峡封鎖で「化粧品」はどうなるのか――原料と容器から読み解くサプライチェーン

Beauty Reports

中東情勢の緊張により、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の閉鎖が取り沙汰されています。
このホルムズ海峡封鎖によって航行が不安定になると、懸念されるのは原油価格の上昇です。

しかし影響はエネルギーだけではありません。
石油を原料とする石油化学製品は幅広い産業の基礎素材であり、実は化粧品分野にも波及する可能性があります。

その鍵となるのが、原油から作られる化学原料のナフサと、そこから生産されるエチレンです。

なぜ化粧品に影響が出るのか

原油から作られるナフサは、石油化学プラントで分解されてエチレンなどの基礎化学品になります。
これらは
・合成ポリマー
・界面活性剤
・プラスチック樹脂
などの材料となり、化粧品の中身と容器の両方に使われています。
そのため原油の調達が困難となれば、石油化学原料の価格上昇とともに、化粧品原料や容器コスト上昇の可能性もあるのです。

影響が出やすい化粧品ジャンル

石油化学素材の使用量が多い製品ほど影響を受けやすいと考えられます。

① 日焼け止め

日焼け止めは
・紫外線吸収剤
・ポリマー(耐水・皮膜形成)
・乳化剤
など合成原料の比率が比較的高い処方です。
特に、ウォータープルーフなどの機能は合成ポリマーによって実現されている場合が多く、石油化学原料と関係が深い分野です。

② ファンデーション

リキッドやクッションタイプのファンデーションでは
・シリコーンオイル
・合成油剤
・皮膜形成ポリマー
などが使われます。
これらはテクスチャーや化粧持ちを左右する重要な素材で、石油化学由来の原料に依存しています。

③ ヘアケア製品

シャンプーやトリートメントは
・界面活性剤
・コンディショニングポリマー
・シリコーン
などを主成分とする処方が一般的です。
浄力や指通りを調整するこれらの素材も、石油化学製品から作られることが多く、原料価格の影響を受けやすい分野といえます。

実は影響が大きい「容器」

もう一つ見落とされがちなのが化粧品容器です。
多くの容器は
・ポリエチレン
・ポリプロピレン
・PET
などの樹脂で作られています。

これらはすべてエチレン系の石油化学製品であるため、
原料価格が上昇すると容器コストの上昇につながります。

化粧品業界では、容器は製品コストの中でも比較的大きな割合を占めるため、石油化学の動向が間接的に影響する可能性があります。

トレンドとして「バイオマスへの移行」も

ただ、近年のトレンドとして「原料の多様化」が挙げられます。

環境負荷低減の観点から、従来の石油由来ナフサではなく、植物油や廃食用油を原料とした「バイオナフサ」からエチレンを生成し、それをもとに合成ポリマーを作る動きが大手化学メーカーや化粧品原料メーカーで加速しています。

化学構造(ポリマーとしての性質)は石油由来と全く同じですが、カーボンニュートラルの観点から「植物由来の合成ポリマー」という選択肢が増えているのが現状です。

消費者への影響は?すぐに品薄になる可能性は低い

ホルムズ海峡封鎖による影響がすぐに化粧品の品薄につながる可能性は高くありません。
化粧品メーカーは通常、原料や容器を一定期間分確保しており、短期的な供給の混乱は吸収できるケースが多いとされています。

一方で、原料価格や樹脂価格の上昇が長期化すれば、製造コストを押し上げる要因になる可能性もあります。

エネルギーや石油化学の動向は、一見すると化粧品とは遠い話のようにも見えます。しかし、原料や容器といったサプライチェーンを通じて、私たちの身近な製品とも静かにつながっていると言えそうです。

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